コラム-「ファスティング(断食)」について

はじめに-断食とその歴史

現在「ファスティング=fasting=断食」は美容業界・健康業界でも一部の人達によって関心が集まり、ダイエットに関心が高い人にも耳にしたことがある言葉になってまいりました。

一方で「ファスティング=断食」という言葉は、単に食べ物を断つという意味合いだけではなく、古代から続く人類の生活習慣や宗教、または儀式との繋がりを感じさせるものでもあるともいえます。

あらゆる時代、多くの国々で「断食」が実践されてきたことは、何千年にも及ぶ長い歴史の中で「断食」が人類にとって意識の変化やからだの健康を保つ為に、その価値を持ち続けてきた事の証明であると言っても過言ではありません。

まず「断食」の一般的な意味は、ある一定の期間すべての飲食物を断つことです。

また食物だけの摂取を断つ宗教的行為をしても、「断食」という言葉が使われます。

その歴史は古く、紀元前から生活習慣や儀式として存在するともいわれており、『新約聖書』『旧約聖書』『マハーバーラタ』『ウパニシャッド』『クルアーン』といった古書、聖典とされる書物の中でも言及されています。

なぜ人類が長い歴史の中で断食を行ってきたのかの目的を一言で言い表すことは難しいのですが、主に以下のようなものがあるとされています。

断食の種類とその目的

  • 人生の中で繰り返される危機的状況において、その難を避けるために断食が行われる。
  • 海外の中には出産前後に、妊婦やその夫に断食が課される部族がある。
  • 家族が死んだ場合にその遺族が全ての食物を断ったり、一定の食物を断ったりする部族がある。
  • 日本では死者の命日に遺族は生もの(なまもの)を断つ風習がある。
  • 祈りを行う場合、その効果をより高めるために断食を行う。
  • イスラム教において断食は非常に功徳があるとされており、断食中になされる祈願は神に聞き入れられるとされている。
  • 精神を鍛える修行の一形態として断食を行う。

その他、世界の偉人たちも断食の実践者といわれています。

バイーア連邦大学のヒポクラテス像(ブラジル)

イスラムにおいてはラマダーンの月に、日の出から日没までの半日は一切の飲食をしない断食があります。

ユダヤ教やキリスト教にも、定期的な断食があり、仏教でも煩悩を克服・滅却するために断食を行う場合があります。

そして現在、インターネットで「断食」という言葉を検索すると、出てくるのは健康関連の記事が多く、女性のダイエット記事の中にもファスティング(断食)に関するものを見つけることができます。

その目的は「内臓を休ませる事で機能を回復させるため」「脳の集中力を高めるため」「眠気を消すため」「免疫を向上させるため」など様々です。

中でもファスティングを行う意味には体内に蓄積された老廃物、不純物を体外に排出することや、私たちのからだを構成している細胞の入れ換えを目的にファスティングを行うケースもあります。

現代日本の状況では、加工食品の中に含まれる有害な添加物や化学物質を含む薬品類を完全に避けて生活を送ることは難しいと言われておりますが、定期的にファスティングを行うことはからだに蓄積されていく不純物を定期的にお掃除するといった感覚で捉えて頂いても良いかもしれません。